馬なり!直観競馬ライフ♪

直感を信じた競馬予想と日々のあれこれ

アーモンドアイに魅せられてJAPAN CUP 後記

秋、深まる府中の森

都心から少し離れた、競馬場は

今年も肌寒い空気を誰しも忘れる

そんな熱気の中にあった。

 

【スタート】

「彼女」はなんとも自然に

それが

これまでも当然の事であったかのように

好スタートを切り、

これもまた悠然と逃げ体制に入る

「キセキ」を前に見る

2番手集団の中に構えた。

これまでで1番のスタート。

 

ともすれば、トリッキーで

包まれる危険を伴う枠番、

1枠1番に不安を唱える

大人達を宥めるように。

 

 

私は、その日

ショッピングモールで

久々に待ち合わせる

彼女のことを探した。

彼女がひとつ上の階から覗かせた笑顔は

相変わらず

何だか悪巧みしてるみたいな、

それでいて、無邪気な、

そんな色を残している。

その笑顔が私を何だか嬉しくさせる。

 

彼女とは今月初めから

2人の将来が見えなくなっていた。

何度か会って、電話で話をしつつ。

状況だけ考えると、

今日が最後に会って話す日になる。

そんな予定すらあった。

 

ただ、今日を迎えてみると、

全く〝最後に会う日〟ではなかった。

穏やかに、

いつも通り会話が始まった。

 

一歩踏み出そう。

 

 

【向正面】

「彼女」は依然として悠然と、

前に1、2頭だけを見て進んでいく。

レース後のインタビューで、

調教師も、ジョッキーも、

この段階で勝利を現実のもの

として

感じていたと話しているように、

包まれる事も、かかることもなく、

前や横にいる馬など、

気にすることなく、自分のペースで

あるいは、ジョッキーと決めたペースで

優雅に進む。

 

思い起こせば、

〝今月初めから〟という訳では無かった。

私自身も、もっと前からわかっていた

‘今のままではダメだ’っという感覚。

彼女はより素早く決断して、

彼女らしい、ムダのない結論に

至っただけなのかもしれなかった。

私なりに変わろうとするだけでは

足りない何か…

悪い癖で、

抗えば抗うほど、考えれば考えるほど、

私は迷走していた。

本当はわかっている、その何かに。

彼女もきっと、迷っていた。

私が迷わせてしまった。

自分のなりたい自分になる事が、

なろうとする事が

出来れば、続けられるはず。

簡単で難しい答え。

 

前に進もう。

 

 

【3、4コーナー】

依然「彼女」の手ごたえは変わらない。

充分だ。

手綱を持たない我々にも、

その感触は伝わってくるかのように

「彼女」は

徐々に突き放そうと脚を伸ばす

「キセキ」のすぐ後を

虎視眈々とついていく。

その差二馬身。

もはや「彼女」の前には

「キセキ」ただ一頭。

後続にいるはずの12頭に、

気配はない。

 

「キセキ」をかわせば、

このレースを勝てる。

それは、レースを見守る私達にも、

「彼女」にも、わかっていた。

 

 

彼女に今日会おうと言ったのも、

「彼女」の出る、

JAPAN  CUPを観ようと言ったのも、

ずいぶん前になる。

まだ別れ話なんて、

出てきてもない頃。

 

出会った時期も、惚れたのも、

大きくて綺麗な彼女の瞳や、才能、

私にとって彼女は

「アーモンドアイ」だった。

だから、いつか会わせたかった。

単純に、純粋にそう思っていた。

 

だから、別れ話が出て、

会う約束が、元々あったこの日に

‘会って話をしよう’と提案した後でも、

思い直し、

〝一緒にJAPAN CUPに行きたい。

彼女と「アーモンドアイ」

を会わせたい〟

そう思った。

せっかくこの世界で出会えた彼女と、

最後に会うかもしれないのに、

「別れたくない」「別れる」

なんて、

つまんない話だけで、その日を

終わりたくなかった。

それだけだった。

 

彼女の返事は

「いいよ。」

 

自分の力を出そう。

 

 

【最後の直線】

「彼女」に余力は

まだあるように見えた。

しかし、「キセキ」も脚を伸ばす。

残り400メートル。

 

私は小さな彼女が、

少しでも人混みの中から

直線の芝生が観れるように、

レースに参加できるように、

彼女の体を抱き抱えて、持ち上げる。

筋力のある彼女だから、

姿勢が保てた。

 

自然と声が出る。

「キセキ」をかわせば、勝てる!

 

かわせっ!!

かわせっ!!!

 

坂を登りきり、

あと200メートル。

 

「アーモンドアイ」は

「キセキ」をかわし、

一気に先頭に踊りでる。

後続はもう来ない。

 

私は彼女を抱き抱えたまま、

叫び続ける。

 

「アーモンドアイ」に魅せられて

 

ゴール板の前を

「彼女」は当然のごとく

1番先に通過する。

 

走破時計は世界レコード。

 

 

「彼女」が勝っても負けても、

私と彼女の人生に関係ない。

それも事実。

 

 

でも、私には関係あった。

 

夢を叶えよう。

 

 

競馬場に、次も脚を運びたくなる。