馬なり!直観競馬ライフ♪

直感を信じた競馬予想と日々のあれこれ

ブエナビスタ〜彼女が魅せた絶景〜

今週のお題「雪」

 

ブエナビスタ

直訳すると「素晴らしい景色、絶景」

そんな美しい名前を持った

一頭の競走馬の思い出。

 

 

2009年  〜春〜

 

桜花賞単勝人気は1.2倍

誰もが彼女の勝利を疑わなかった。

私も例に漏れず、そんなファンの1人として

初めて訪れた阪神競馬場パドックで、

初めて会うブエナビスタという一頭の牝馬の姿を見守った。

 

伝説と呼ばれた新馬戦で3着。

それ以来、負けなしでクラシックに挑む

彼女のレースは、観る者を魅了した。

圧倒的末脚。

道中はほぼ最後方に位置し、最後の直線で全馬をゴボウ抜きにするレースぶりはまさに痛快。

 

そんな彼女に会うために、

彼女のレースを観に、

私も阪神を訪れたのだった。

 

初めてみるブエナビスタは…ごく普通の馬。

気合いを前面に出すのでもなく、

お世辞にも立派な馬体でもなく、

ただ淡々とパドックを周回する彼女は、まさに普通の競走馬で、私にはそれが驚きだった。

 

散りかけの桜を背に、

鮮烈な末脚で彼女は勝利した。

 

 

2010年  〜夏〜

 

2009年春には圧倒的な末脚と評され、

クラシック二冠を難なく達成したブエナビスタ

 

彼女の競走馬生活の未来は、明るいものであると誰もが疑わなかった。

 

しかし、想像したよりもずっと、

彼女の競走馬成績は振るわなかった。

もちろん、残した戦績は輝かしい。

ただ、どんなレースでも必ず全力で走る彼女の頑張りや、その才能。さらにはレースの中身、順調にレースを使える強い肉体も加味すると、G1レースをもっと勝てたはず。

もっと素晴らしい戦績を残せたはず。

そう、ありもしない事実に想いを馳せてしまう彼女のファンは私だけではないだろう。

 

2009年に牝馬二冠を達成してから

2010年のヴィクトリアマイルまでのおよそ一年、

彼女はG2レースの1勝しか勝ちを積み重ねることが出来なかった。

秋には降着や展開の不利も絡んだ敗戦も続き、ドバイに挑んだ翌春も、惜しくも2着に敗れた。

そんな中、国内でのレースは全て1番人気を背負いながら、彼女は1度も凡走する事なく、常に全力で走りきり、勝てないレースも含めて、全てのレースで馬券に絡む活躍は見せた。

 

そして久々となる牝馬限定のマイルG1。

1.5倍の1番人気に支持されるのは必然だった。

 

青々とした新緑の生い茂る府中の杜を背に、

ピカピカの緑の芝生の上を、

まるで桜花賞の再現のように、

彼女は強烈な末脚を発揮し、

直線一気に他馬を抜き去った。

 

 

2011年  〜秋〜

 

2010年にはヴィクトリアマイルを勝ち、

その秋には天皇賞も圧勝したブエナビスタ

やはりこの馬の強さは本物であった。

常に全力で走る彼女が、再び輝ける。

そう思えた。

 

中でも、広くて直線の長い東京競馬場でのパフォーマンスは圧巻で、

2010年ジャパンカップも当然の1番人気に支持された。

このレースでも、圧倒的なパフォーマンスで1着入線をはたした彼女は、又しても不運に見舞われる。

2着降着

このレース以降、ブエナビスタは1年以上勝ち星から見放される。

 

懸命に走るものの惜敗が続く。

 

2011年天皇賞

ブエナビスタは国内で出走したレースで、初めて馬券圏外4着に敗れる。

そして、続く

2011年ジャパンカップ

これまでデビュー以来ずっと背負ってきた、

ファンからの1番人気という支持を、

遂に他馬に渡すこととなった。

 

しかし、

前年には不運な形で手中に出来なかった

ジャパンカップ勝馬の称号を、

彼女は意地と勝負根性で手繰り寄せる。

 

秋の色濃く、木々も色づきを消し

鮮やかさを欠いた芝生が冬がもうそこ迄きていることを知らせる府中で、

力強く走るブエナビスタは以前とは違って見えた。

全力を出す姿は変わらない。

 

決して鮮やかな末脚ではなかったが、一完歩ずつ先頭に近づくと、力強くかわし去った。

 

 

2011年  〜冬〜

 

真っ黒な空に包まれて、

中山競馬場の芝生コースと大型ビジョンだけが煌々と光るなか、一頭の馬がゆっくりと歩く。ブエナビスタの引退セレモニー。

 

彼女が姿を現して間も無く

雪が降ってきた。

 

 

ラストレースとなる有馬記念

パドックでは私がこれまで観てきた中で、1番といえる活気溢れる雰囲気をみせるブエナビスタの姿があった。いつもと違う。

 

冬らしい灰色の空の下、

直線に入ると彼女は早々に他馬に抜き去られ、7着に敗れた。

最終レース終了後には、引退セレモニーが決まっている。

 

 

真っ黒な空から

真っ白な大粒の雪が降る。

 

光を集めるターフの上では、これまでレースで一度たりともレースを諦める事なく、全力で走り続けた彼女が、これまで出会った騎手を乗せ、最後となる競馬場のターフの感触を確かめる。

 

ターフ以外は黒と白。

ただ、彼女の頑張りを称える温かさがある。

 

そんな絶景。